天孫ニニギノミコトを、高天原から高千穂まで道案内したと伝えられる猿田彦大神。物事に先立って道をひらき、人々を良い方へ導く「みちひらき」の神として、日本全国で親しまれている神様です。本作では、そのお姿を、月夜の竹林で神楽を舞う一場面として描きました。
猿田彦さんとの出会い
初めて猿田彦大神を意識したのは、令和5年、結婚30周年の記念に妻と伊勢神宮へお参りしたときのことです。道中で立ち寄った猿田彦神社で、「聞いたことのあるお名前だな」と手を合わせたのが始まりでした。
それからしばらくして、今年の夏、小樽の天狗山に神社があると知り、足を運びました。山頂の「天狗の館」には、天狗の顔をした猿田彦の面のレプリカが並び、山頂の天狗山神社にも猿田彦大神が祀られていました。「一度、猿田彦さんを描いてみたい」――その想いは、この山で生まれました。
旅の途中、山中で舞う神楽
どのような猿田彦さんを描こうか、いくつもラフを重ねました。いかつく、少し怖い人相の猿田彦は、よく見かける姿でもあります。少し違った猿田彦を描けないか――そう考えたとき、道案内の旅の途中を思い浮かべました。長い道のりでは、きっと疲れて、休むこともあったはずです。宿に泊まるような旅でもなかったでしょう。山の中でひと息ついたとき、猿田彦さんが自ら神楽を舞っていたら――。お顔は勇ましいままに、失礼ながら、神楽を舞っていただくことにしました。
舞の姿は、松前神楽から
神楽の姿の手がかりを探していた10月25日、小樽の龍宮神社で行われた御創祀150年の記念式典に参列する機会をいただき、そこで松前神楽を拝見しました。その舞を撮らせていただいた動画を何度も見返すなかで、顔を上げ、前かがみになる一瞬を見つけ、本作の舞の姿の参考にさせていただきました。
猿田彦大神は、天宇受売命(あめのうずめのみこと)と結ばれたとも伝えられています。画面の奥には笛を吹く巫女の姿を添えましたが、主役はあくまで猿田彦さんです。
月明かりの竹林で
夜、竹の隙間からこぼれる月明かりのもとで舞っている――そんな情緒のある場面にしたいと考えました。導きの神様が、静かな夜にひとり舞う姿を、ぜひ手に取ってご覧いただければ幸いです。
絵画作家 光日子(こひこ)









