前職に身を置いた三十四年。長きにわたり、数え切れないほど多くの方にお世話になってまいりました。作家として歩み始めたばかりの私に、そうしたご縁のなかからあたたかなご依頼をいただけることは、本当に有難いことです。この「感謝と前進」も、釧路で長年、水産業を営んでこられた会社の社長様からのご依頼で生まれた一枚です。私が釧路時代に大変お世話になったお方で、退職後の会食の席で、「それなら俺にも書いてくれ」と声をかけてくださいました。
「あんたが思う、俺の会社のイメージで」
どんな言葉やモチーフにしましょうかと伺うと、社長様はこうおっしゃいました。「あんたと俺の付き合いだ。あんたが思う、俺の会社のイメージで書いてくれ」と。その一言に込められた信頼が、何よりも嬉しく、また身の引き締まる思いでした。会社の歩んでこられた歴史、これからの展望、社長様のお人柄、そして釧路という土地と水産業へ捧げてこられた貢献――そのすべてに思いを馳せながら、筆を執らせていただきました。
石の年輪 ― 積み重ねられた歴史
真っ先に心に浮かんだのは、石が積み重なってできた年輪のような模様でした。木の年輪が長い歳月をかけて刻まれるように、いくつもの結晶が固まり、重なり合って、今の会社の姿がある。その揺るがぬ歴史の厚みを、石の年輪として画面に据えました。
鮭・いくら、そして六角形 ― 幸せと繁栄の土台
会社の看板であり続けてきた秋鮭といくらを、これまで築かれてきた確かな土台として描きました。特にいくらには、幸せと繁栄をもたらすといわれる六角形――ハニカム構造の模様を重ねています。ひとつひとつが支え合い、隙間なく連なる石の積み重なる姿は、地域と人に支えられ、また地域と人を支えてきた、この会社の在り方そのものだと感じました。
帆立 ― 新たな柱、勢いのままに
近年、秋鮭をめぐる環境は厳しさを増す一方で、新たな大黒柱として帆立が力強く存在感を増しています。その姿を、私はありがたく、また頼もしく感じております。本作では帆立を大きく、勢いのあるかたちで位置づけ、これからますます発展されていきますようにとの願いを込めました。
裏に込めた「ありがとう」 ― 感謝の輪
そして画面の奥には、「ありがとう」という言葉から生まれたサイマティクス模様を静かに忍ばせています。サイマティクスとは、音の周波数が描き出す波紋の文様のこと。私がこれから制作の中心に据えていくモチーフでもあります。長きにわたり続いてこられた会社は、多くの人に支えられ、また多くの人を支えてこられました。人から会社へ、会社から人へ――めぐりめぐる感謝の輪でつながっている。その想いを、周波数の波紋に託しました。
玄関に飾られて
お納めした際、社長様は「人が出入りする玄関に飾るよ」とおっしゃってくださり、たいへん喜んでいただけました。この絵が皆様の玄関に飾られ、新たなパワーとなって会社を支えていきますことを、心よりお祈り申し上げます。衰退もあれば発展もある――大きな転換期にあってなお、感謝を胸に前へ進みゆく貴社の、ますますのご発展を願うばかりです。退職して間もない私にこのようなご縁を賜りましたこと、あらためて深く感謝しております。
絵画作家 光日子(こひこ)